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【トップ対談】貨物鉄道は2024年問題を救えるか

  1. 日本貨物鉄道(JR貨物)
    代表取締役社長
    犬飼 新 氏 


    全国通運業連合会
    会長
    福田 泰久 氏

2024年問題が物流業界に留まらず、日本経済をゆるがす大問題として間近に迫っている。トラックドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されることによって発生すする問題は、会社の売上・利益減少、トラックドライバーの収入減収・離職、荷主側における運賃上昇といった大きな社会的な問題を生じることとなる。

こうした問題を救える有力な手段の1つとして、鉄道貨物がある。どうすればJR貨物と利用運送事業者が効果的なタッグを組み、日本の物流の危機を救えるのか――。JR貨物・犬飼新社長と全国通運業連合会・福田泰久会長のトップ対談で探った。   
  (2023年3月17日掲載)


 

東京レールゲート
東京レールゲート

 

――JR貨物の現況
犬飼 当社は貨物鉄道事業が中心だが、この3年間はコロナの影響が色濃く、輸送量ベースで平均10%強減った状態だ。
2017年頃をピークとしたコンテナの輸送量は、トンキロベースで2割近くは減っている。収入が大きく減少している一方で、どうしても電気機関車を走らせることで電力料の高騰が、駅構内のフォークリフトも軽油を使用しているので燃料代の高騰が、大きくのしかかっている。

 また、コンテナや機関車、貨車を製作するにしても、原材料費が2~3割も上がっていることも大きく影響している。他に、当社の場合、国鉄時代からの古い設備が残っており、その維持更新用が負担となる。IT関係のシステム更新や成長・戦略投資も投資効果が出るまで時間がかかることもあり、非常に厳しい状況だ。

 ただ[JR貨物グループ長期ビジョン2030]にも掲げた通り、私たちが目指している総合物流企業グループに向けて東京レールゲートやDPL札幌レールゲートなど物流施設は、計画通り昨年の7月までに各々オープンし、比較的順調にテナントのリーシングもできており、総合物流企業を目指すためのハードウェア設備投資はほぼ計画通りに進んでいる。

犬飼新 氏

 

 また、2024年問題やカーボンニュートラルといった貨物鉄道輸送がお役に立てるフォローの風も吹いているのでそこをしっかりとご利用いただけるよう利用運送事業者の皆さんとタッグを組んで、お客様に提案できるようにしたい。

 もう一つの大きな問題は、冬であれば雪害で、夏は台風や豪雨で列車が止まってしまうことが、非常に大きなネックになっている。利用されるお客様からすれば、災害の影響を受けやすいことが鉄道の弱点というのが、正直な気持ちだと思う。

 昨年、国が設置した[今後の鉄道物流のあり方に関する検討会]でも、鉄道利用が伸びていない理由の一つに自然災害による輸送障害があると指摘されている。そうした災害時の輸送障害への対応力の強化として、迂回輸送や代行輸送のシミュレーションを行うなどの備えに取り組んでいる。これからの需要が増えてくると信じてそれらに対して企業努力も含めてしっかり取り組んでいきたい。

――利用運送事業者 (通運)から見たJR貨物
福田 現在、通運事業だけを専業的にやっている企業は少なく、一般の運送業務と抱き合わせでやっているので、経営的に大きな影響は受けていないと思う。

 しかし、これからは2024年問題の顕在化などで、鉄道貨物輸送のニーズは増えてくると思う。

 それに対して、JR貨物としてその能力をどう増やしていけるかだ。今のままでは長距離トラックはどんどん減ってきていて、大量輸送は船にシフトするが、鉄道は5㌧単位から運べるので、その利便性から何とか鉄道の能力を増やしていただたいと思っている。

 私は以前から30両とか50両編成の長大列車ができないのかと言ってきたが、それに代わる列車の本数を増やすことはできないか。

 

福田泰久 氏


犬飼 ご利用しやすい時間帯はすでにかなりの頻度で列車を運転しており、その時間帯に新たな列車を増やすことは簡単ではないのが実態ではある。

福田 20ft・31ftのコンテナは、リフトで積み卸しを行えるが、5㌧コンテナでは手積み・手卸しの解消が、大きなテーマになっている。

犬飼 手積み・手卸しは確かに大きな課題だ。運転手側では運転はいいけれど、手積み・手卸しは重労働だ。荷主さん側の手積みできっちり荷物を1個でも多く積みたいという意識を変えていただかないと、運転手さんがもたないと思う。

福田 5㌧コンテナを利用するような荷主さんに対するPRをどう進めていくかも課題であり、荷主さんによっては「われわれでもコンテナを利用できるんですか」と聞いてくるケースもある。通運事業者のわれわれも一緒になって「中小の方も手軽にコンテナを使えますよ」というPRを、積極的にやらなければならない。

 ちなみに、われわれセンコーグループでは、500㌔㍍以上でトラックを利用しているのは25%程度で、残りは鉄道と船を利用している。


犬飼 [今後の鉄道物流のあり方に関する検討会]においても、まだまだ認知度が低いとか、鉄道を使うメリットに対してPRが足りないとの指摘もいただいている。

 JR貨物としてのPRはやっていくが、やはり利用運送事業者の皆さんとタイアップして鉄道をどう使えば良いか、どこ
に行けば使えるかなどについて、PRしていくことが一層必要になると思う。


――新たな輸送サービス[ブロックトレイン]
犬飼 ブロックトレインは列車1編成もしくは1編成のうち半数以上の輸送力を往復でブロック(区画)で貸し切るコンテナ列車。2024年問題を見据え早めに鉄道輸送の枠を抑えるという考えもあり、当社としても往復で買っていただけるというメリットがある。

 トヨタの自動車部品輸送を除くと、あとは積合せ事業者の列車が多いが、昨年のダイヤ改正で、フォワーダーズブロックトレインという特定の荷主に限らない利用運送事業者を窓口にしたブロックトレインもつくった。これからこれがどのくらい浸透して利用が増えていくかを期待している。

――トラック事業者にとっての2024年問題
福田 ドライバーの確保や運賃の問題などをどう考えていくかについては非常に難しい問題だ。250万人いた団塊の世代が70歳を越して、一斉に第一線から退場してしまい、新たに参入してくるのが120~130万人しかいない世代であるため、単に賃金を上げれば人が集まるといった問題ではなくなってしまっている。

 営業トラックも軽貨物事業者がやっているように個人事業者にするか、あるいは外国人のドライバーを許可するなどをしないと、今のまま日本人の枠だけで考えていても無理じゃないかと思う。外国から作業職で入ってきた人が、日本人の女性と結婚すれば運転手として認められるが、そんな程度ではとても間に合わない。

 その他、今まで1社だけで運行していた荷主さんに、2社、3社と合わせ生産性を上げて、必要なトラック台数を減らすといったことも、一方では必要だろう。

――貨物新幹線
福田 貨物新幹線の導入はどうなるのかな。リニア中央新幹線ができたら、今の新幹線はちょっと余力が生じるだろうから、そこへ貨物をつないでどうにかできないかと思うが。

犬飼 貨物新幹線については[今後の鉄道物流のあり方に関する検討会]でも検討していこうと、昨年から実務者レベルの打合せが始まった。貨物専用車両の導入には客会社などの協力が必要と考えているが、まだこれから検討に着手する段階だ。

福田 今のままの新幹線で貨物列車を走らせることはできないのか。犬飼 一つの車輪にかかる重さが同じであれば今のままでも良いが、それにしても安全性の面からも貨物専用車両の開発が必要になる。

 もう一つの課題は、貨物を運ぶ場合は人を乗せているより多分スピードは抑えることになると思うし、旅客新幹線が高速で走行する中で遅い貨物新幹線が走るというダイヤ上の問題も出てくるのでそうした課題を抽出している段階だ。

課題はいろいろあるが・・・

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