特別インタビュー 「CLOに求められる役割」

- 流通経済大学
矢野 裕児 教授
特別インタビュー 「CLOに求められる役割」
中小企業を巻き込む エコシステムの構築へ
改正物流効率化法により、取扱貨物量が年間9万トンを超える「特定荷主」に対し、経営幹部層からの物流統括管理者(CLO)選任と中長期計画の提出が義務付けられた。10月末の計画提出期限が迫る中、企業はどのようなガバナンスを構築し、サプライチェーンの再構築に向き合うべきなのか。流通経済大学の矢野裕児教授に話を聞いた。
改正物効法がCLOに求める「経営参画」。企業は組織ガバナンスをどう明文化すべきか
制度の本来の趣旨は、誰をCLOに据えるか、どのような組織図を描くかという表面的な問題ではない。もしCLOが単なる「運行管理者」のような位置づけであれば、経営陣は適当に担当者を決めて済ませてしまうだろう。しかし、経営層に近い管理職から選任せよと国が指定することで、企業として上位の意思決定層が物流に向き合わざるを得なくなる。
国が真に求めているのは、CLOという役職の設置そのものではなく、経営層全体に「ロジスティクスを真剣に考え、対応する体制を作らねばならない」という意識改革を迫ることにある。(2026/9/4)次世代エコシステム構築にどうリーダーシップを発揮すべきか
共同配送などの取り組みにおいて、真にその効果を享受できるのは大手よりも、ロットが小さく輸送コストが割高になりがちな中小企業の方である。しかし現実には、制度の対象外となっている小さな荷主こそが、深刻な荷待ち問題などを抱えているケースが多い。
大手企業間で共同化を進めるだけでなく、大手が主導して中小の荷主を巻き込んでいく構造を作らなければ、サプライチェーン全体の根本的な効率化は成し得ない。もし、企業がCLOの設置や計画提出を単なる義務の消化と捉えるなら、将来、名前だけの形骸化した役職になってしまう可能性もある。
平時の「効率化」と有事の「レジリエンス」に経営トップはどう投資判断を下すか
これが最も難題だ。平時の効率化と有事の冗長性、両方を同時に考えるしかない。かつては「とにかく在庫を減らし、拠点を集約すれば正解」という時代だった。しかし、輸送コストが高騰し、災害などのリスクが常態化した現在、単純な拠点集約や過度な在庫削減は命取りになる。在庫をある程度確保し、拠点ネットワークを見直すなど、検討すべき変数が過去と比較にならないほど増大している。他社の成功事例が自社にそのまま適用できる時代は終わった。正解が簡単には出せない中、複雑な要素を総合的に判断して自社にとって最適なロジスティクスを導き出すことこそが、これからのCLOに求められる極めて高度な役割である。


